結果説明について 2つの新しいパンフレット
医師 若杉慎司
健康の秘訣は日本人の罹っている病気と健康維持のポイントを知り対策を実践することです。テレビ、ネットなどで医療の情報はあふれていますが、誤りや偏りも多く見られますから注意が必要です。
東京人間ドッククリニックでは、以下の「健康の教科書」を使って健診での要点をご説明し、当日に出る検査データや画像診断でご自身の状況をお伝えします。
人間ドックのご予約後にご自宅に検査についての注意点などを郵送しています。
最近新たに2つのパンフレットを入れるようにしました。
胃がんに関わるピロリ菌の検査と除菌、便潜血検査と大腸ポリープの切除の重要性を説明しています。
ピロリ菌陽性で除菌のおすすめがあったら必ず除菌治療をお受けになってください。
便潜血が2回のうち1回でも陽性になったら大腸カメラを受けましょう。
「胃カメラとピロリ菌検査の重要性について」
胃がんは日本人の国民病と言っても過言ではありません。
男性の9人女性の18人に一人が胃がんを発症しており、年間に5万人が命を落とします。
ピロリ菌が胃がんの必須条件であることと除菌によって発症が大幅に減少することから以下の対策が講じられています。
・40歳より健診でABC検査(ピロリ菌の有無とペプシノーゲンによる萎縮の程度)が開始
・胃カメラを受けたときに保険でピロリ菌の有無を検査し陽性なら除菌
・中学生が学校単位でピロリ菌検査をして陽性なら除菌
ピロリ菌の陽性の場合は除菌の指示が出て近隣の胃腸科クリニックなどで保険で除菌することになります。
中学生を含む30代までの除菌は胃がん発症率をほぼ0%にします。
40代以降でも7割から9割の胃がん発症抑制効果が確認されています。
もはや胃がんのポイントは早期診断から予防にシフトしていると言えるでしょう。
しかしながら、まだまだピロリ菌の検査そのものを40代以降で受けていない方は多くいらっしゃいます。さらに、40代以降で除菌しても大幅に胃がん発症は減りますが0になるわけではなく、その後の胃カメラによるフォローは必要です。
胃がん検診の目的は胃がんを見つけることですが、バリウム検査でも胃カメラによる検査でも萎縮性胃炎の程度によって胃がんの発病の可能性を推し量れます。萎縮が高度なほど胃がんを発症しやすいことが分かっています。
胃カメラで、表層性胃炎や胃底腺ポリープの診断名が付くことが多くありますが、問題のないものですのでご安心ください。
「便潜血検査と大腸がん、大腸ポリープ」
大腸がんの発見には便潜血検査と大腸内視鏡検査が有用です。
大腸がんの発症数は、男性で第一位、女性で第二位です。
死亡数では、男性第三位、女性で第一位です。
精度の高い検査は、当然大腸内視鏡検査となりますが、検診でよく用いられるのは便潜血検査になります。採取した便への血液の混入判定を行う検査であり、主に大腸での出血の有無をみるのを目的としています。便潜血陽性とは、採取した便の検体の中に血液が混入しているということです。
集団検診の報告では、便潜血検査を1000人に施行すると、陽性になるのは50人ほどと言われています。さらにそのうちの2~3%である1~2人が大腸がんと診断されます。
なお、便潜血反応による大腸がん検出率は、進行がんで60~75%、早期がんで30~40%であり、2日間連続検査法を行うことで10~15%程度検出率がアップするとされています。
便潜血検査が陽性となるには、出血病変があることが要因となりますが、ポリープやがんにおいてもある程度大きくならないと出血することが少ないために、便潜血検査では陽性になりにくいことがあります。そのため、ポリープや早期の大腸がんでは便潜血検査が陰性となることがあるので、注意が必要です。
すなわち、「便潜血検査が陰性だからといって大腸がんがないとは言い切れない」ということです。そのため初期の段階で確実に見つけるのには、大腸内視鏡検査による精密検査を行う必要があります。
そのほか炎症性腸疾患や痔核・裂肛などの肛門疾患でも便潜血陽性となることがあります。
大腸がんの9割以上は大腸カメラでポリープを確認して切除(ポリペクトミー)することで予防することができます。
便潜血が陽性の場合は必ず大腸カメラをお受えいただき、ポリープがあれば必要な場合は切除しましょう。