健診であまり問題にならない病名
医師 若杉慎司
健診や人間ドックを受けるといろいろな病名が付くことがあります。
必ずそれぞれの病名についての指示やコメントはされると思いますが、聞きなれないものだと不安になりますね。
ここでは健診で病名がついてもあまり気にしなくていい場合について解説したいと思います。
脳CT
・くも膜のう胞
生まれつき脳の一部にある空洞で中身は水です。その部分は脳が欠損していますが脳の機能に影響はありません。
・陳旧性脳梗塞
以前に脳梗塞を発病したことを意味します。多くの場合過去にも自覚症状がなく気付くことなく治癒したものです。梗塞が広範囲の場合は症状がありすでに治療や経過観察されますので、検診で初めて指摘されるのは問題がないことがほとんどです。
胸部CT・レントゲン
・陳旧性肺炎症
過去の肺炎や胸膜炎、肺結核などで肺に炎症の影ができたものです。現時点では病気はなく、やけどのケロイドに似ています。たまに新たな感染と見分けにくいことがあり、その場合は精査となります。
・肺のう胞
多くは肺の上部にできた空洞です。中には空気が入っています。まれに破れて肺気胸を起こすことがあります。肺気胸を繰り返したりしなければ特に何もせず放置していいものです。
腹部超音波検査
・脂肪肝
肥満、飲酒、糖質の過剰摂取によって肝臓に脂肪が蓄積した状態です。超音波では高輝度つまり白く映り、白さの程度で脂肪肝の重症度が分かります。高度になると肝機能が悪化します。その場合は食事・運動のご指導をさせていただきます。
・肝のう胞
肝臓にできる空洞です。中身は水で問題はありません。かなり大きかったり大きなものが多発すると肝機能のチェックや腹部をぶつけないようにするなどの注意は必要です。
・肝血管腫
比較的多く見つかる所見です。肝臓の血管が増殖した良性の腫瘍です。ほかの腫瘍と見分けずらいことがあり、CTやMRIで確認することがあります。症状や検査での異常をきたすことは稀です。
・肝内結石、肝内石灰化
肝臓の実質部分に石灰化した石があることを指します。肝臓の中を走る胆管内に石があると治療を要しますが、実質部分の石は問題になりません。経過観察で十分です。
乳腺超音波検査
・乳腺症
30、40代の女性にしばしば見られます。ホルモンの影響で痛みやしこりを感じることがあります。したがって整理や妊娠の影響を受けます。乳腺症と乳がんは関連はありませんが、しこりを持続して感じたら乳がんの精査を受けることが必要です。
・乳腺繊維腺腫
10代からできる良性の腫瘍です。思春期や妊娠中のホルモンの分泌が増える時期に特に見つかります。閉経後は縮小します。超音波検査で発見され必要な場合はマンモグラフィーを受けていただくことになります。
・乳腺のう胞
乳腺の一部にリンパ液や水分が貯留する状態です。良性で問題はありません。検診の際や、しこりやでこぼこ、痛みを感じて受診して診断されます。乳頭から分泌物が出ることがあります。血性の場合は精査が必要になります。
胃カメラ
・胃底腺ポリープ
ヘリコバクターピロリ菌の感染がない方に多く見られる良性のポリープで、胃カメラで診断されるポリープのほとんどを占めます。大きいものや表面の形状が異常な場合は短期間での再検査を要します。
・表層性胃炎
多くの方に見られる胃の炎症です。多くが慢性的なものです。みぞおちの痛みやもたれ感が強い場合は治療をすることがあります。
・胃潰瘍瘢痕・十二指腸瘢痕
過去に胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発病し治癒した状態です。通常はすでにヘリコバクターピロリの除菌が済んでいるので、潰瘍を再度発症することはありません。万が一除菌が済んでいない場合は治療をお受けください。