便潜血が陽性だったらどうすればいいでしょう
医師 若杉慎司
結論としては近隣のクリニックで大腸カメラを受けていただくことになります。
実は健診の結果で最も指示に従っていただけないのが大腸の精査です。便潜血陽性であれば大腸の精査ー大腸カメラーが進められますが多くの方がお受けになりません。
便潜血が陽性であれば胃や腸、肛門のいずれかで出血があったということになります。腸で出血していればポリープやがんなどの腫瘍の可能性が考えられます。
よくある話ですが、自分は痔があるから潜血陽性は当たりまえと言って精査をお受けにならない方がいるのですが、危険です。痔からの出血と高を括っていたら大腸がんだったという例をたくさん見てきました。
現在女性のがん死数のトップは大腸がんです。40歳になったら2年に一度の自治体あるいは健保組合のがん検診で便潜血検査をうけることができます。残念なことに受診率は5割に届いていません。便検査が陽性であれば大腸カメラを受けていただければ大腸がん死はほとんど防ぐことができます。
それはなぜでしょうか。
大腸がんのほとんどは、大腸ポリープから発生します。大腸ポリープは大きくなると、表面の一部からがんが発生してきます。気付かずにいると徐々に大きくなり、早期→進行がんになってしまいます。
こうなるとリンパ節転移や他臓器への転移の可能性が出てきますので、内視鏡では切除不可能となります。そのため、そのようになる前に大腸ポリープ(良性)のうちに切除するわけです。
近年、食生活の欧米化により大腸がんは増えてきています。また遺伝性のあるがんでもあります。がんによる死亡数も、現在男性では第3位、女性ではすでに第1位となっております。2020年には、罹患数、罹患率とも男女ともに第1位になると見込まれています。
大腸ポリープは徐々に大きくなって直径が10mmを超えるころからがんになることがあります。
大腸カメラの際にポリープが見つかると必要な時にはポリープの切除が行われます。
ポリペクトミーという内視鏡手術です。
小さいうちにポリペクトミーを行っておけば将来ポリープが大腸がんになることをほぼ予防できます。一度ポリープができると多くの場合2,3年後にまた出来てきますので、再度受診しカメラを受けていただくことになります。
大腸カメラは8割以上の施設で全身麻酔を使って行いますので苦痛はありません。
便潜血検査が陽性だったら、「住所 大腸カメラ」でネット検索をしてご自宅からの距離やサイトの内容に応じてクリニックを選定してください。便潜血陽性であることを伝えていただき、一度受診し検査の内容の説明を受けます。これは保険診療で受けることができます。
大腸カメラの前処置としては下剤を飲んでいただきます。その関係でご自宅からあまり遠くない施設をお選びいただくといいでしょう。クリニックで下剤を飲んで当日に検査をすることもできます。
鼻から入れる胃カメラに比べればハードルは高いですが、これからは最も重要な検査となります。
40歳を迎えたらぜひ2年に一度の便潜血検査を受けて必要な場合は大腸カメラをお受けになってください。