新型コロナウィルス抗体検査がオプションに加わりました
医師 若杉慎司
人間ドックを受診していただく際のオプションに新型コロナウィルス抗体検査が加わります。 なお抗体検査を受けることができるのは少なくとも2週間以内に、熱、咳などの風邪症状がない方に限られます。
新型コロナウィルスの検査には、PCR検査、抗原検査、抗体検査の3つがあります。
PCR検査は現時点でのウィルス感染の有無を調べます。新型コロナ感染症の症状と思われる症状がある方、感染者と密に接した方などが検査を受ける条件となります。検査を受けられるかはお住いの自治体で対応していますので、受診した施設を通じて医師会や保健所に相談することになります。海外への渡航のためや、症状はないが受けてみたいという方に自費で検査をする医療施設もあります。
抗原検査も現時点での感染の有無を調べます。発症9日以内であれば唾液で検査することが保険収載されました。PCR検査と比較して感度が低いことが分かっています。
このたび始まる抗体検査は上記の2つと目的が違います。
抗体検査は症状が治まってから、それが新型コロナによるものかを調べる検査です。あるいは身近に感染者がいてすでに無症状で感染しているかが分かります。
IgMとIgGの2つの抗体の有無を検出します。
抗体検査で IgMが陽性の場合は感染初期ですので熱や咳、呼吸困難などの症状があれば医療機関を受診していただき、その後は自治体の対応に任せることになります。
IgGが陽性なら感染してしばらく経っているので、特に検査をすることはなく、会社などで多人数で検査した場合は陽性者の部署のコロナ予防体制に問題があるかもしれないので対処することになります。通常はIgGが陽性になるころには症状が改善していることが多いですが、呼吸に問題がある場合は胸部CTを当院などで撮影してもいいでしょう。コロナによる肺炎は後遺症が多く、CT画像で影が残りやすいです。このころには他への感染はしないので院内感染の可能性はありません。
一般的に感染症でIgG抗体が陽性になると免疫を獲得して再発症しなくなりますが、新型コロナではそれを期待できないようですので、IgG抗体陽性の証明書はあまり意味はありません。自身も再度感染して症状が出たり悪化する可能性があります。また、感染して他人にうつすことも考えられます。
新型コロナは遺伝子の変異が起こりやすく、一波に感染していても二波では新たに感染しもっと重症になることも想定されます。
企業単位のように大規模に検査して陽性者が出た部署の対策はもちろん会社全体の感染予防体制を見直すきっかけになります。
個人の場合ではでも知らない間に感染していたことが分かりますので、家族や職場での抗体検査を勧めるきっかけになります。
以上より IgG抗体陽性の方には次のようなご指導をさせていただきます。
1、IgM、IgG抗体ともに陰性でも感染を完全に否定することはできません。
2、感染すると通常はIgMがまず上昇しそのあとにIgGが上昇します。したがってIgM陽性は初期感染、IgGはある程度感染から時間が経っていることを意味します。再感染の場合はIgGが先に上がってくることもあります。
3、IgGが陽性の場合は他への感染拡大の可能性はほぼありません。
4、抗体陽性の場合は、数週間前に感染していることを意味するので、可能性のある感染経路を推定し、家庭内、職場、出先での感染対策を再度見直しましょう。