人間ドックで見逃し注意の項目 ②
医師 若杉慎司
大腸カメラ
1、大腸ポリープ
大腸ポリープや大腸がんは食生活の欧米化で赤み肉の摂取が増え食物繊維の摂取が減少したことが一因と言われています。
また遺伝の関与もあって、血縁者に大腸ポリープやがんがあれば要注意です。
通常は40代以上に発症しやすいですが、20代での発症も稀ながらあります。
大腸ポリープは腫瘍性と非腫瘍性のふたつに分かれます。
腫瘍性のものはがんや腺腫です。腺腫は良性腫瘍ですが進行すると一部ががん化して大腸がんになります。
非腫瘍性のポリープは、過形成性ポリープ・過誤腫性・炎症性があり、こちらもまれにがん化することがあるため、切除の対象になります。
ポリープは徐々に大きくなり表面にがんが発症します。
2、大腸がん
大腸がんの9割以上は大腸ポリープが増大したものです。
大腸ポリープのうちに診断して切除すれば大腸がんはほとんどが予防できます。
大腸ポリープが1㎝を超えるとがん化の可能性が高まります。
ポリープの表面にできたがんは少しずつ深く浸潤し粘膜下層、筋層、漿膜に進展します。
その次にはリンパ節、腹膜、肝臓、肺などに転移してきます。それがステージが進んだ状態ということです。
下記のようにステージが進めば5年生存率は低下します。
早期診断の重要性が分かりますね。
大腸がんと診断された場合は、内視鏡での切除か開腹手術での大腸の切除のいずれかが選択されます。
最近では腹腔鏡を用いて小さい傷で切除することができるようになってきました。
40代後半から便潜血検査で陽性にならなくても一度は大腸カメラを受けていただき、大腸ポリープや早期がんの診断をするのが望ましいといえます。
3、大腸憩室
大腸憩室は通常あまり問題にはなりません。
ただし、憩室炎や憩室からの出血を起こすことがあります。
肛門出血や発熱を伴う腹痛や圧痛が見られた場合は速やかに受診することです。
憩室炎は虫垂炎と鑑別困難なことがありますので、憩室があることが分かっている場合は腹痛で受診の際にお申し出ください。
腹部超音波
1、慢性肝炎
肝機能障害が継続する状態です。多くはB・C型肝炎ウィルスの感染や飲酒が原因です。
放置すると肝硬変に進展することもあり、ウィルスの治療や飲酒の制限を要します。
2、脂肪肝
大量の飲酒や炭水化物中心の食事で発症します。
多くの場合肝機能障害やメタボリックシンドロームを合併しますので、生活習慣の改善を要します。
3、胆管(肝内)結石
肝臓の胆管にできる結石です。
石があることで感染しやすくなり、胆管炎や肝膿瘍の原因となります。また胆汁の流れを妨げて閉そく性黄疸を引き起こすことがあります。放置すると胆管がんを発症しやすくなります。
基本的には内視鏡などで結石を除去する必要があります。
4、胆管拡張
先天的な疾患が多いですが、成人になってから診断されることもあります。
胆管結石、胆管がん、膵がん、慢性膵炎に合併することがあり、見つかれば精査を要します。
5、胆のう腺筋症
胆嚢壁内におけるRokitansky-Aschoff sinus(以下、RAS)の増殖により胆嚢壁の肥厚、壁内の嚢胞性変化(拡張したRAS)、上皮の増殖、平滑筋細胞の増生を特徴とする疾患であります。約9割に胆石を伴います。
胆のう炎を発症したり膵胆管合流異常を合併した時は胆のう切除をします。
6、肝・膵腫瘍疑い
肝臓、胆のう、膵臓は病変が重なることが多く、異常があった場合は合わせて精査をすることが重要です。
検診で異常を指摘されたら必ず追加検査を受けましょう。
7、腎のう胞、肝のう胞
多くの場合問題になりませんが、のう胞内に腫瘤がある場合は精査を受けましょう。
8、腎結石
小さい結石はよく見られ、問題ありません。
石の大きさに関わらず尿管結石を繰り返すときは治療しましょう。