インフルエンザが早くも流行! 今年も予防策をしっかりと
医師 若杉慎司
【例年でもっとも早い流行】
今年はすでに、インフルエンザが流行を始めています。
例年は、11月末ごろから流行が始まり、1~2月に流行がピークになる、という傾向を見せていました。
ところが今年は、9月からすでに流行入りの目安を上回り、じわじわと各県での罹患率を高めています。東京都は、今の調査方法になった1999年以降でもっとも早い流行、と発表しています(新型インフルエンザが流行した2009~2010年を除く)。
なぜ、これほど早い流行を見せているのか、理由はわかっていません。
ただ、流行が早く始まれば、そのぶん流行の期間は長く引き伸ばされることになるでしょう。つまり、今年は例年以上に長い期間、インフルエンザを意識して過ごすことになる、ということです。
【ストレスがたまると、インフルにかかりやすくなる】
免疫力を高めておくことも、インフルエンザの予防には重要です。
免疫とは、私たちの身体に備わっている外敵や内敵から身を守る防衛力。
免疫力の高い状態を保っておくと、たとえインフルエンザウイルスが体内に侵入してきたとしても、発症を防ぐことができます。
職場や家庭など、同じ空間で生活していても、ウイルス感染する人としない人がいるのは、主に免疫力の違いによるものです。
ところが、現代的な生活は、免疫力を低下させやすい事項がたくさんあります。
たとえば、不規則な生活、睡眠不足、栄養の偏った食事、お酒の飲みすぎ、喫煙、冷たいものを頻繁に飲む、早食い・大食い、お菓子類などの間食、肥満などです。
なかでも、もっとも免疫力を低下させやすいのは、過度のストレス。
心身にストレスがかかりすぎると、免疫力が低下し、インフルエンザを発症しやすくなってしまうのです。
とはいえ、多忙な毎日のなかでは、ストレスがたまるのも当然のこと。だからこそ、リラックスできる時間を積極的につくることが大切。心からほっとする、楽しいと感じる時間を持つことで、ストレスを軽減させることができます。
たとえば、1~2時間に1度は休憩をとり、温かい紅茶を飲んでほっこりするのも、とてもよいリラックス方法です。
また、夜はゆっくりと温かいお風呂に浸かり、ストレッチなどで軽く体を動かしてから寝るだけでも、心身はリラックスし、睡眠の質を高めてくれるでしょう。
【たんぱく質をしっかりとって、インフル予防!】
免疫力を高めるためには、毎日の食事も大切です。
私たちの体内に備わった免疫細胞や免疫組織、また免疫力の強化に働くホルモンや臓器などはすべて、食事からつくられています。
そのことを意識し、身体によいものを食べるようにするだけでも、免疫力を強化していくことができます。
とくに重要なのが、たんぱく質。免疫細胞もホルモンも、たんぱく質からつくられます。良質なたんぱく質を身体に送りこんであげることが、働きのよい免疫細胞やホルモンをつくることにつながります。
主なたんぱく源は、大豆食品、卵、魚、肉。たんぱく質の推奨量は、成人男性で1日に60グラム、成人女性で1日に50グラムとされています。
では具体的に、どの食品をどのくらいのたんぱく質が含まれているでしょうか。
食品中のたんぱく質量をいくつか紹介しましょう。
卵1個(50グラム)=たんぱく質量6.2グラム
もめん豆腐1丁(300グラム)=たんぱく質量19.8グラム
絹ごし豆腐1丁(300グラム)=たんぱく質量14.7グラム
納豆1パック(50グラム)=たんぱく質量8.3グラム
さんま1尾(可食部69グラム)=たんぱく質量12.77グラム
鮭(100グラム)=たんぱく質量22.3グラム
かつお(100グラム)=たんぱく質量25.0グラム
鶏むね肉(皮なし100グラム)=たんぱく質量24.4グラム
鶏もも肉(100グラム)=たんぱく質量22.1グラム
牛もも肉(100グラム)=たんぱく質20.7グラム
豚こま肉(100グラム)=たんぱく質量18.4グラム
男性60グラム、女性50グラムのたんぱく質を1日にとるとなると、かなりしっかり食べる必要があることがわかるでしょう。
ただし、肉にはたんぱく質のほかにも、脂質が多く含まれます。脂質はとりすぎれば肥満の原因に。肥満も免疫力を低下させるリスクファクターの一つです。
脂質のとりすぎを避けて、たんぱく質をしっかりとるには、さまざまな食材からその摂取を考えることが大事です。
また、肉を食べる際には、「赤身」と呼ばれる部位を選びましょう。
牛肉では、ランプ・もも・ひれ。豚肉ではもも・ひれ。また、鶏肉は赤身ではありませんが、皮をとりのぞいた胸肉にたんぱく質が豊富です。
魚では、カツオやマグロ、ブリ、サンマ、イワシなどの回遊魚にたんぱく質が多くなります。
【春菊やブロッコリーなど旬の野菜を食べよう】
免疫力を高めてインフルエンザを予防するには、旬や盛りの野菜・根菜を食べることも大事です。
冬の旬や盛りの野菜・根菜には、ウイルスへの抵抗力を高める栄養素がたっぷり含まれます。
たとえば、鍋の素材として美味な春菊。そこに含まれる「カロテン」というビタミンには免疫力を高めたり、鼻やのどなど粘膜の材料となったりする働きがあります。
カロテンは脂溶性で、油脂に溶け出しやすい性質を持ちます。ですから、肉などと一緒に食べたり、油で炒めたりするのがおすすめ。他にも、ニンジン、カボチャ、モロヘイヤ、ホウレンソウなどにも豊富です。
また、冬にたくさん流通するブロッコリーも栄養素の宝庫。免疫力を高めるビタミンC、赤血球の材料になり貧血予防に必要な葉酸、抗酸化作用と解毒作用に優れたスルフォラファンなどが含まれます。
【ワクチン接種は早めにすませよう】
インフルエンザの予防接種を(ワクチン)を受ける人も多いでしょう。
最近の統計では、成人の1回の接種でおよそ50パーセントの有効率とされています。また、発症してしまった場合も、肺炎や脳炎など重症化を防ぐ効果が高いとされています。
ワクチンがインフルエンザのウイルス感染を予防するのは、不活化したウイルスを体内に入れることで、免疫が抗体をつくるためです。
抗体とは、たとえるならば敵を倒す「武器」。それぞれの異物に対し、ぴったり適合する特定の抗体を免疫はつくり出します。
インフルエンザウイルスの抗体は、1回のワクチン接種で2週間後から血中に増えはじめ、4週でピークになり、3~5か月後から低下します。
抗体が体内にある状態のところに、インフルエンザウイルスが侵入してくると、すばやく敵を倒し、発症を抑えてくれるのです。
ですから、流行の始まった今、ワクチンを接種を考えているならば、なるべく早く打っておくとよいでしょう。
ただし、冬に流行を起こすインフルエンザウイルスには、主に3つのタイプがあります。そこでワクチンは、毎年、ウイルスのタイプを予測して流行が始まる前に製造されます。
そのため、まったく異なるウイルスが流行してしまった場合、ワクチンを接種していても発症を予防できないこともあるとは、知っておいてくださいね。
だからこそ、ワクチンを接種したとしても免疫力を高める努力をおしまず、日々の対策をしっかりと心掛けていきましょう。