人間ドックで見逃し注意の項目 ①
医師 若杉慎司
人間ドックを受けた後の結果をよく確認されていますか?
当院では人間ドックを受けていただく際に、前回の人間ドックを含めた健診の結果を持参いただくようにお願いしています。
1年、2年経てば検査結果が変わってくることがありますし、前回に見られなかった異常があれば原因を探す必要があるからです。
前回の結果についてお話した時にあまりそれを把握してない方が少なからずいらっしゃいます。
せっかく受けた健診や人間ドックの結果をよく見ないで放置してしまうのはもったいないことですね。
ただ、これには私たち医療者の責任もあるように思われます。
医学用語は分かりにくいことがあって、うまくポイントが伝わらないことがあります。うっかり普段使っている医学用語でコメントしがちです。
無用に怖い思いをさせてしまうことも見受けられます。
もちろん結果を受け取ったらよく読んでいただきたいですが、施設によって健診結果の書式がまちまちでわかりにくい場合もあります。
そこで、要注意の病名を挙げていきたいと思います。
それぞれの項目で必ず対応していただく必要があるものです。
①胸部レントゲン 胸部CT
肺腫瘍疑い
肺の腫瘍は結節やひきつれ、無気肺などの所見で診断されます。日本人のがん死亡の原因に一位が肺がんですから重要な検査です。
活動性肺炎
昨今問題となっている新型コロナの感染でも見られる疾患です。肺炎はすべての年齢で罹りうるものですが、特に若年者や高齢者は重症になりやすいので注意を要します。比較的に軽い風邪症状でも診断されることがあります。
肺結核の疑い
感染者は減少していますがまれに集団感染で話題になります。疑われた場合は結核菌の有無、排菌の有無を精査します。軽症や無症状で排菌していることもあり精査は重要です。
肺気腫
主に喫煙によって引き起こされる肺病変です。高齢男性に多くの患者がいますが、症状が軽く気付かないことも多い疾患です。
胸水
肺や胸膜の炎症や腫瘍があるときに胸膜と肺の間に供水が貯留することがあります。原因の精査が必要になります。
②胃カメラ
萎縮性胃炎
ピロリ菌で引き起こされる胃炎で、胃がんの前兆と言えます。ピロリ菌の有無を確認し陽性の場合は除菌が必要となります。胃腸上皮化生は萎縮が進行した状態です。
逆流性食道炎
過食、肥満、早食い、脂肪の摂りすぎなどで発症する食道下部の胃との境界にできる炎症です。胸やけなどの症状があれば内服治療を要します。炎症が強い状態が続くとバレット食道になります。これは食道がんのリスクを高めます。
胃・十二指腸潰瘍および潰瘍瘢痕
20年前までは多くの患者さんがいましたが、ピロリ菌の除菌が行われて今ではまれな疾患です。潰瘍は症状がないことしばしばあるので、健診で潰瘍やその瘢痕を診断された場合はピロリ菌の有無を確認し陽性の場合は除菌が必要となります。
食道静脈瘤
慢性肝炎や肝硬変で合併する食道下部にできる静脈瘤です。出血する予兆が見られる場合は肝臓の治療と並行して静脈瘤に対し硬化療法やゴム結紮法などの処置を要します。
過形成性ポリープ
赤みが強いポリープでピロリ菌陽性の場合に見られやすいことが分かっています。がん化することがあり、ピロリ菌による萎縮性胃炎で発生するので除菌するとともに年に一回の胃カメラでの確認が必要です。
ピロリ菌がない場合にできる胃底腺ポリープはほとんどがん化せず問題はありません。
胃アデノーマ
基本的には良性ですが、放置して大きくなるとがん化することがあるので年に一度の胃カメラ経過観察を要します。
胃粘膜下腫瘍
胃粘膜の下層にできる腫瘍です。多くは良性で筋腫が多いですが、リンパ腫やカルチノイド、平滑筋・神経・脂肪由来の腫瘍もあります。増大傾向が見られたり表面に陥凹が見られたら悪性の可能性があり精査を要します。
胃がん・食道がん・喉頭がん・咽頭がん疑い
これらは当然直ちに精査を要します。