朝食を抜くと太るでしょうか?
医師 若杉慎司
名古屋大学のチームが「朝食抜くと太る」という研究結果を発表しました。
ラットでの実験ですが朝食を抜いたグループには体重増加が認められたそうです。
一日の餌の量は同じでも朝食を抜いたグループは脂肪が増え、体重が増加しました。
そのメカニズムとしては朝食抜きの場合は肝臓での脂肪の代謝に関係する遺伝子の働きが抑制され、食事中の体温が上がりにくいことによることが分かりました。
これまで世界中で朝食を抜いた場合の体重や代謝についての研究は行われてきました。
どちらかというと朝食を抜くと太るという結論が大勢を占めます。
また、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、そして冠動脈心疾患を増加させるという研究結果が出ています。
一日の食事の配分は3食でそれぞれ3:3;4が望ましいと言われています。
ただいろいろな考え方があるので以下にご紹介します。
朝食を抜くメリットは以下です。
1、朝食を抜くのが習慣の方は抜いたほうが頭がすっきりして、反対に食べると眠くなると言います。
2、朝食を抜けばその分摂取カロリーが減るので痩せるという意見があります。
3、カロリーを制限するとサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が働き、老化のスピードが遅くなり肌、血管、脳などが若く保たれ、寿命が延びると考えられています。メタボリックシンドロームも抑制します。
反対にデメリットは
1、通勤、通学ではカロリー消費が結構多いものです。また脳の栄養源は糖なので朝食を抜いて低血糖になると十分に脳の活動をすることができなくなります。
2、直食後の低血糖は食欲を増し昼食を多く食べる原因になります。ここで高血糖の状態になりやすくなってインシュリンの分泌が促進されます。インシュリンは糖の脂肪組織への移行を高めて肥満につながります。
3、食事の後に代謝が亢進する食事誘発性熱産性(DIT)の働きは朝のほうがゆるに比べて4倍あり体温が上がりカロリーが消費されやすい。
4、朝食を食べない原因は夕食が遅い場合に多く、夕食が遅いと食後にすぐ寝てしまうので消費カロリーが少なくなる。
このグラフでは朝食を抜くことで体重が増加することが分かります。
また、夕食が遅いことで消費カロリーが減って体重が増えることが検証されています。
(古谷彰子の著書・柴田重信(早稲田大学教授)の監修『時間栄養学が明らかにした「食べ方」の法則』を参考に作成)
高瀬ら「内臓脂肪になりにくい食事習慣の実態と代謝特性」
第61回日本栄養改善学会シンポジウムより作図
色々な考え方や研究結果が出ていますが、朝食を抜いたほうが消費カロリーが減って体重が増加するという意見が大勢を占めています。
日本人が朝食を摂らなくなったのは20数年前からです。
理由は以下が考えられます。
・核家族化が進み家族で一緒に朝食を摂らなくなった
・共稼ぎの世帯が増えて外食が増え、朝食・夕食を作る機会が減ってきた
・晩婚化で一人暮らしが長くなり朝食抜きに慣れてしまう
・遅い時間の外食が習慣になることで就寝時間が遅くなり朝に食欲が湧かなくなった
人間ドックで20代から50代の方を拝見して食事の摂り方をお聞きしていると、この10数年で大きく食事のパターンが変化しているのを実感します。
「体は食べたもので出来ている」という言葉があります。
食事の内容と摂るタイミングに気を付けたいものですね。
関連リンク
http://www.mdcexam.net/found/lifestyle_related_diseases/obesity.html